- 柔道を学んでみたいけれど、何から勉強すればいいかわからない……。
- 柔術の試合に足技を取り入れたいけど具体的な使い方がわからない……。
- 試合で優位に立つために足技の精度を上げたい……。
今回はそんな悩みを解決できる動画教則、『THE ART OF ASHIWAZA』をご紹介します。
この記事を読めば、『THE ART OF ASHIWAZA』がどんな教則なのか、そしてなぜこの教則が柔道をを学びたい方や武器として足技を使いたい方に最適なのかがわかります。
オリンピック金メダリストであり、柔道界のトップ選手として数々の実績を持つ鈴木桂治選手が、長年培った足技の技術を惜しみなく解説する本作。
その構成や収録テクニックの概要を説明し、最後には実際に教則を学び、実践した感想もお伝えします。
ブログ『柔術旅 〜BJJ JOURNEY〜』運営者。高校時代から柔道に取り組み、警察官時代まで練習を積む。警察官を退職後、21歳のときに地元福井のブラジリアン柔術サークルで柔術を始める。その後は東京、大阪、フィリピン、ニュージーランドなど国内外を転々しながら各地の柔術・総合格闘技ジムに所属し大会に出場。現在は関西を拠点に日本各地に赴き大会出場及び出稽古を重ねる。
教則『THE ART OF ASHIWAZA』とは?

収録テクニック
全編:02:05:57
- 足技とは
- 小外刈
- 2.1 小外刈の基本
- 2.2 小外刈の実演
- 2.3 小外刈のディテール
- 2.4 小外刈の極め
- 2.5 小外刈の応用
- 2.6 小外刈の注意点
- 小内刈
- 3.1 小内刈の基本
- 3.2 小内刈の実演
- 3.3 小内刈のディテール
- 3.4 小内刈の極め
- 3.5 小内刈の注意点
- 大内刈
- 4.1 大内刈の基本
- 4.2 大内刈の実演
- 4.3 大内刈の足のディテール
- 4.4 大内刈の投げのディテール
- 4.5 大内刈の極め
- 4.6 大内刈の注意点
- 内股
- 5.1 内股の基本と実演
- 5.2 内股の足のディテール
- 5.3 内股の動きのディテール
- 5.4 内股の極め
- 5.5 内股の注意点
『THE ART OF ASHIWAZA』は、2004年アテネオリンピック柔道100kg超級の金メダリストであり、現在は柔道全日本代表チームの監督である鈴木桂治先生の教則です。
緻密な崩しを活かした足技の基本から、ディテール、応用、極めや注意点まで掘り下げて、4つの足技が収録されています。
柔道の試合で実際に役立つ実戦的な技術を学べるため、初心者から上級者まで、あらゆるレベルの柔道家にとって貴重な教則といえるでしょう。
また、足技に焦点を当てていることから比較的ハードルが低く、柔術などの他競技者でも競技に取り入れやすい内容になっています。
鈴木選手ならではの「なぜその動きが有効なのか」という論理的な解説が随所に盛り込まれているため、技を再現するだけでなく、技の本質を理解することができる教則です。
鈴木桂治先生について

■ 鈴木 桂治
生年月日:1980年6月3日
出身地:茨城県
戦績・タイトル:
- 2004年アテネオリンピック柔道男子100kg級 金メダル
- 世界柔道選手権大会 男子100kg級 3度優勝(2003年大阪大会、2005年カイロ大会、2007年リオデジャネイロ大会)
- 全日本柔道選手権大会 3度優勝(2004年、2007年、2010年)
- 柔道世界ランキング1位(2003年-2007年)
日本柔道界を代表する足技の名手。卓越した技術と強靭な精神力でオリンピックや世界選手権など数々の大会で活躍し、日本柔道を世界に示してきた存在である。特に「足技」を駆使した投げ技は彼の代名詞であり、鋭いタイミングと巧みな崩しで世界中のライバルを圧倒した。柔道競技から引退後は、指導者としての活動に加え、柔道の普及と発展に尽力。自身が代表を務める「KJA(桂治柔道アカデミー)」では、次世代を担う選手の育成だけでなく、柔道の魅力を幅広い層に伝えるための取り組みを行っている。講演活動やイベントを通じて、柔道の精神や価値を広めることにも力を注ぎ、柔道界全体への貢献を続けている。
教則の構成

『THE ART OF ASHIWAZA』では、柔道の代表的な足技である小外刈、小内刈、大内刈、内股の4つの足技が紹介されています。
また、各技は全て下記構成で説明されています。
- 基本:道着の持ち方、握る場所、目線、足の動きと崩し、足の置く場所、角度、刈足の置き方などの基本の説明
- 実演:基本を踏まえた上での動きの実演
- ディテール:より効果的に技をかけるためのディテール(力の入れ方など見えない部分やさらに細かい部分の説明、かけるときのコツや意識など)
- 極め:投げ切る(一本を取る)ためのポイント
- 応用:より実戦的な技の活用方法(左右の崩しと前後の崩し、フットワーク)※小外刈のみ
- 注意点:技が正しくかかるように押さえておきたいポイント
特に注目すべきは基本の内容です。
上記の通り、技を構成する全ての要件が一つひとつ細かく説明されており、初心者でも少しずつ理解を深めていくことができるようになっています。
また、全体的な構成も特筆すべき点であり、段階的に技を身につけることができるように下記のように構成されています。
『THE ART OF ASHIWAZA』の構成
- 基本からしっかり学ぶ
初心者でも無理なくステップを踏める。また、経験者は基本の学び直しで見落としていたポイントを再認識できる。 - 技と理論の実践
実演とディテールを通して、基本で説明した理論と実際の動きを結びつけることができる。 - 完全な形へのブラッシュアップ
応用でより実戦を想定した動きを捕捉し、最後に注意点で見直し・修正を加えることで、完全な形で技を習得できる。
つまり、技を完全に習得するまでの過程が無駄なくコンパクトにぎゅっと凝縮された構成になっています。
これにより、通常であれば多大なる時間を要する柔道の技がより効率的に習得できます。教則で学んだポイントを反復練習(打ち込み、ドリル)により繰り返し確認することで、より深い理解と習得を目指せるはずです。
教則の概要
足技のコンセプトが理解できる
『THE ART OF ASHIWAZA』では、最初に「鈴木先生にとっての足技とは何か?」というところから知ることができます。
具体的には下記の通りです。
鈴木桂治先生にとっての足技とは?
- 相手を投げる技:背負いや大外など大きな技と同じように相手から一本を取る
- 相手を崩す技:背負い、大外、内股など大きな技に繋げるために活用する
- 試合の展開を変える技:悪い流れ、劣勢な雰囲気を足技で変える
大きな技に繋げる前段階として、相手を崩すために使用している人は多いかもしれません。
しかし鈴木先生は、足技を一本を取る技として使用しています。
今まで一本を取るための技として足技を使用していなかった人も、この教則で「一本を取る足技」を学ぶことで、戦略の幅が格段に広がるでしょう。
柔道家にも柔術家へも配慮


『THE ART OF ASHIWAZA』の特筆すべき点として、柔道家だけでなく柔術家への配慮がされていることが挙げられます。
柔道とブラジリアン柔術では、競技性の違いから立ち姿勢も大きく変わります。
柔道は姿勢よく背筋を伸ばして立つスタンスが一般的ですが、ブラジリアン柔術はレスリングのような前傾姿勢が一般的です。
そのため同じ技でもかけ方が変わります。
したがって、ブラジリアン柔術で柔道の技を使う場合、そのまま転用できず少なからずの変更を自分で加える必要がありますが、この教則を見れば柔術に応用しやすい足技の掛け方を知ることができます。
この点は、柔道の技を取り入れたいブラジリアン柔術競技者、ブラジリアン柔術に転向した柔道家にとってとてもありがたいポイントです。
初心者でもわかる詳細かつ具体的な説明


前述の通り、『THE ART OF ASHIWAZA』は最初に基本をしっかりと学ぶ構成になっています。
例えば、一つ目の収録技である小外刈で説明されている内容は以下の通りです。
収録技①「小外刈」の基本の内容
- 手の持ち方・握る場所
- 組際の目線
- 足の動き・崩し
- 足の置く場所・角度
- 足の置き方
- 刈足の置き方
このように、一つの技をかけるために必要な要件全てに対して言及し、細かな説明がされています。
そのため初心者でも一つずつ小さくステップアップして学ぶことができます。
また、ここまで細かく動画で説明されている教則は他にはないと思われるため、経験者でも普段意識できていなかった点に気がつけるでしょう。
自分にはなかったエッセンスにも気づくことができれば、自分の足技をより「一本を取る足技」に近づけることができますね。
実際に使ってみました
では、『THE ART OF ASHIWAZA』で学んだ技を実際に使ってみた感想を書いていきます。
私は普段ブラジリアン柔術をしているので、ブラジリアン柔術のルール、スパーリングでの感想です。
安全にテイクダウンを取れる
足技の利点として、安全にテイクダウンが取れるところが挙げられます。
スタンドの攻防の際、柔術では引き込みの選択肢もありますが、その引き込みに合わせて足をかければテイクダウンが取れます。
ただ、それがわかってはいてもうまく足をかけられず、うまく合わせることができない、という人もいるでしょう。
実際私も柔道経験者でありながら、引き込みに足技を合わせるのは苦手でした。
しかし、こちらの教則では足の形や置く位置まで詳しく説明されていたおかげで、改めて意識してみたところうまく足をかけることができました。
特に小内刈、小外刈は相手の引き込み際に合わせやすくリスクも少ないので、精度を高めればより正確にテイクダウンを取れるようになれると感じました。
小内刈からアンクルピック(朽木倒し)にいくのもよく使われる戦術ですね。
投げられなくてもボトムの展開に繋がる

柔道において足技は、試合中の立ち技の展開や連続技の糸口として多用されます。
これは柔術でも同じで、倒せなくても次の展開に繋げることができます。
たとえば足技をかけることで、相手は嫌がって足を引いてきます。
そうすると片足に重さが乗り一瞬動きが止まるので、その止まった足に対しガードを作りにいくといった使い方もできます。
倒すほどのクオリティにできなくても、足技が十分有効に使えることがわかりました。
両袖持ちの内股が使いやすい

実際に使ってみた中でも、ピックアップしたい足技は両袖を持った内股です。
こちらの内股は、通常の内股と比べて動作が大きくないため、柔道経験者である私もこんな掛け方もあったのかと驚きました。
内股は腰技のように相手を跳ね飛ばす掛け方が一般的で、私自身苦手でしたが、この内股の掛け方であれば無理なくできました。
相手の腕を体で巻き取るようにかけるため、足が掛からなくとも相手が大きく崩れてくれます。
また、背中をさらさないのでバックを取られることもありません。
こちらの内股は通常の内股よりも柔術向きと言えそうです。
柔術のさまざまなシーンで活かせる
これは実際に試したわけではありませんが、他にも柔術において柔道の技術が活かせるシーンは多々あります。
- 大内刈:ガードから相手の片足を持って立ち上がった際、相手がケンケンしながら耐えてきた足を刈って倒す。
- 内股:ドッグファイトやスクランブルの展開で、相手の近い足を跳ね上げて崩す。
このように、柔術では柔道を活かせるシーンが多いので、正しい足技の学ぶ意義は大きいと言えます。
こんな人におすすめ
柔道を一から学びたい人

上述の通り、『THE ART OF ASHIWAZA』では一つひとつの技がかなり詳細に説明されています。
また、段階的に複数のパートにわけられた構成から、途中でわからなくなる、再現できなくなるといったこともないでしょう。
この点から、初心者にもかなり配慮して構成がされていることがわかります。
なにより背負い投げなどの大きな技ではなく「足技」がテーマであるため、競技に取り入れるハードルは比較的低いです。
柔道を一から学びたい、柔術などの他競技で柔道の技を使ってみたいという方には非常に適した教則であるといえます。
足技を武器にしたい柔道家

『THE ART OF ASHIWAZA』は、足技を得意技として磨き上げたい柔道家にぜひ手に取ってほしい教則でもあります。
なぜなら前述の通り一つひとつの技が驚くほど詳細に解説されていることに加え、一般的な解説を超えた「鈴木桂治先生ならではのディテールの深さ」を知ることができるからです。
私自身柔道の経験はありますが、何気なく使っていた技が、実は驚くほど細やかな意識や動作で構成されていることに気づかされました。
また、特筆すべきは、その技術が感覚的なものではなく、言語化され、動画で説明されている点です。
「なぜこの動きが必要なのか」「何を意識すれば成功率が上がるのか」といった疑問に対して、丁寧に解説されており、初心者から上級者までその内容を実践に活かせます。
足技を「強力な武器」として使いたい柔道家にとっては、さらに洗練された動きを身につけるために見て損のないない教則と言えるでしょう。
テイクダウンテクニックを取り入れたい柔術家

本教則のテーマである足技は、比較的ハードルが低く取り入れやすい技術であるため、テイクダウンのテクニックを取り入れたいブラジリアン柔術家におすすめです。
また、足技は「ブラジリアン柔術競技において有効に機能する技術」である点もおすすめできる点の一つです。
前述の通り、前提としてブラジリアン柔術では前傾姿勢のスタンスを取ることが一般的です。
しかし、前傾姿勢をとることで、脚の可動域は狭くなり、足をかけられても補うことができなくなります。
つまり、ブラジリアン柔術競技においては、相手のスタンスを崩さずとも、最初から相手は倒れやすい状態になっていると言えます。
これを知っていれば、ブラジリアン柔術において足技がいかに有効かわかるでしょう。
まとめ

『THE ART OF ASHIWAZA』は、足技を「使える技」にするための具体的なノウハウが詰まった教則でした。
鈴木先生ならではの崩しやタイミングの工夫が丁寧に解説されており、「なぜその動きが必要なのか」という論理的な説明に感銘を受けます。
初心者にも分かりやすく、上級者にとっても新たな発見があるこの教則は、柔術のテイクダウンにも応用できるヒントが満載で、私個人としても柔術のテイクダウンに足技を取り入れるヒントを得られたのは大きな収穫でした。
また、足技に焦点を当て、基本を徹底的に詳しく説明し段階的に学べるようにしている構成からは、「(極力ハードルを下げて)より多くの人に柔道を手に取ってもらいたい」という鈴木先生の思いや情熱が伝わってきます。
「柔道は難しそう」「今さら始められない」「柔道の技なんてできない」と感じている人にもぜひ手に取ってほしい教則であり、競技経験者にとっても新しい気づきを与える内容です。
ぜひ『THE ART OF ASHIWAZA』を観て、足技の奥深さを体感してみてください!