「プレッシャー」と「体重をかけること」は違う。
筆者下前が2024年で一番衝撃を受けたコンセプトです。
1分で分かる本記事の内容
こんにちは。
BJJ LABスタッフの下前です。
今回でコラムも4回目になります。
今回はパスガードにおける「プレッシャー」に焦点を当てたテクニック記事です。
「プレッシャー」とはただ相手に体重を浴びせることではなく、相手とのスペースを埋めることで生み出すことができます。
「プレッシャー」を正しくかけるために大切なことが、自分の足でしっかり立つこと=「自立」です。
本記事ではクロスグリップパスを例に動画と共に深掘りしてみました。
最後に「プレッシャー」と「自立」への理解をさらに深めるためのオススメの教則も紹介しています。
- パスガードを強化したい方
- トップでバランスが崩れがちな方
- テクニック記事が大好物な方
PressureとDrive
「プレッシャーと体重をかけることは違う」
このコンセプトに出会ったのは、自分が大好きなMovement Artの2人、ダニエル・マイラ(Daniel Maira)とニコラス・サラス(Nicholas Salles)のクロスグリップパスの教則です。
この教則のチャプター1-レッスン2で説明されています。
では、「プレッシャー」と「体重をかけること」は何が違うのでしょうか?
それぞれを深掘りしていきましょう。
体重をかけるとは?
「体重をかける」とは、シンプルに相手に自分の重さを乗せる行為です。
英語では”Drive”または”Weight on someone”と表現しています。
クロスグリップパスを例にすると、つま先立ちになって相手に自分の体重を乗せてフレームやガードに対抗している状態です。
体重をかけることは、強力なパワーを生み出せるメリットがあります。
しかし体重をかけるということは、体重を相手に預けていることでもあります。
その結果、体重を乗せている一方向にしかアタックができないデメリットが生じてしまいます。
さらに方向転換ができないだけでなく、崩しやいなしなどのカウンターをもらってしまうと簡単に崩されやすいなどの弱みも抱えています。
プレッシャーをかけるとは?
一方、「プレッシャー」は、スペースを埋めることで生み出されるものと説明します。
英語ではシンプルに”Pressure”と表されます。
パスガードは”パスボックス”と呼ばれる相手の腰横のスペースを占領することで成立します。
サイドポジションでは胸、ニーオンベリーは膝でスペースを占領します。
そのため、「距離を詰めてスペースを埋め続けることがパスガードで大切なコンセプト」と2人は説明しています。
つまり、「プレッシャーをかける=スペースを埋め続けること」です。
ここです。冗談抜きで鳥肌が立ちました。
相手のガードを壊すためにいかに相手に体重を浴びせるかを試行錯誤していた自分にとっては雷が落ちました。
クロスグリップパスを例に紐解く
クロスグリップパスでプレッシャーをかけるには?
では、どのようにプレッシャーをかけるべきなのでしょうか?
クロスグリップパスの場合は頭を下げた姿勢のトライポッドベースを作ります。
ウエイトトレーニングで重視されるヒップヒンジと同じ姿勢です。
頭を下げることで相手の胸の前のスペースを埋めて、プレッシャーをかけ続けます。
このトライポッドベースで大切なポイントは足の裏をマットにつけて自分の足で立つこと、すなわち「自立」です。
なぜ「自立」すべきなのか?
なぜ「自立」が大切になるのか?
理由は、相手の崩しやリアクションに対応しながら、スペースを占領し続ける必要があるからです。
「自立」することで相手からの外力にも屈することなく、安定したバランスをキープすることができます。さらにどの方向にも力を向けることができるため方向転換もスムーズです。
「体重をかける」状態のつま先立ちではこのような動きはできません。
動画と共に総復習
それではクロスグリップパスの例を動画と共に確認してみましょう。
自立するために大切なことは、足の裏をマットに着くことです。
体重をかけるときのようにつま先立ちになってはいけません。
足の裏をマットにべったりつけて自立することで、相手がその場からいなくなっても前に倒れることはない「自立」した状態になります。
相手がいなくなってもバランスを崩さない状態か否かが「自立」の判断基準として分かりやすいです。
自立していれば相手が力を加えて崩そうとしても、バランスをキープすることができます。
さらにリアクションに応じたサイドスイッチなどの方向転換も瞬時にできるようになります。
自立した後はプレッシャーをかけましょう。
クロスグリップパスでは、前述した頭を下げたトライポッドベースです。
正直、慣れるまではトライポッドベースをキープすることは大変です。
しかし、得るものは大きいです。
(ここまで読んでいただいた方にはぜひ習得してほしい!)
ぜひ日々の練習と並行してハムストリングのストレッチも実施していただければと思います。
もちろん体重をかけるべきシチュエーションもあります。
例えば、相手の体を捻ることができていて外力が加わる心配がない状況です。
必ずしもプレッシャーをかけることだけが正義ではないのでご注意ください。
プレッシャーと体重を使い分けはぜひ日々の練習で試してみてください。
プレッシャーと自立への理解が深まる教則
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
手前味噌ではありますが、BJJ LABの教則で「プレッシャー」と「自立」についてさらに理解が深まる教則を紹介させてください。
ご購入の際は5%オフで購入できるクーポンがあります。ぜひご活用ください。
5%OFFクーポンコード:shimomae5
鉄壁のインサイドガード|岩崎正寛
プレッシャーについてさらなる理解が深まる教則が『鉄壁のインサイドガード』です。
正座ベースはクローズドガードの内側、蹲踞ベースはオープンガードの内側。
相手のガードの内側、インサイドガードを制することでパスガードまで一手ずつ確実に詰める方法が学べます。
スペースを占領し、強力なプレッシャーをかける極意が詰まった教則です。
上久保式噛みつきパス|上久保周哉
「自立」について理解を深めたい方は『上久保式噛みつきパス』がオススメです。
上久保選手の噛みつきパスはプランクの姿勢で自立します。
自立して相手に崩されることなく、少しづつスペースを埋めてプレッシャーをかけていくスタイルはプレッシャーパスを体現しています。
トライポッドベースよりも柔軟性は求められないため、幅広いレベルの方に取り組みやすい教則です。
サイエンスオブスマッシュパス|山中健也
『サイエンスオブスマッシュパス』も「プレッシャー」と「自立」の双方の理解が深まる教則です。
健也さんのスマッシュパスは半端ないプレッシャーで迫ってきます。
胸の前のスペースに頭が侵入してしまうと、もう戻すことはほぼ不可能です。
占領されることを待つのみです。
スペースの埋め方に加えて、スマッシュパスポジションにおける自立の仕方も学べる点も『サイエンスオブスマッシュパス』がオススメの理由のひとつです。
自立することで強いプレッシャーをかけられるようになろう
いかがだったでしょうか?
本日は下前が2024年で1番衝撃を受けたコンセプトである「プレッシャーと体重をかけることは違う」から、「プレッシャー」と「自立」について深掘りしてみました。
今回はクロスグリップパスを切り口にしましたが、他のパスガードやさまざまなシチュエーションにも応用可能なコンセプトです。
竹浦さんと壁打ちした際には「ボクシングやレスリングにも当てはまるね」という発見もありました。
この記事がみなさんの柔術における新しいアイデアのきっかけとなれば嬉しく思います。
また素晴らしいテクニックやコンセプト、ディテールをシェアしてくれる方々のおかげでこの記事を書けていることを忘れずに、今後もインプットは続けていきます。
欠かさぬインプットが身を助ける
THA BLUE HERB『TRAINING DAYS』
では、また。
最後までご覧いただきありがとうございました!
追伸:2024年を振り返って
2024年はBJJ LABのスタッフとしてたくさんの活動に携わることができました。
旧年はありがとうございました。
2025年も大好きな柔術に真摯に向き合い、BJJ LABのスタッフとして一生懸命に活動していきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
下前 快喜