本教則の哲学(コンセプト)
私がこの教則から感じた大事なコンセプトは以下の4つです
①ベリンボロを細分化する
②相手の背中を向けさせる
③重心の位置に向かって攻める
④コンビネーションとシステムで攻める
教則内で説明しているコンセプトを自分なりに整理してみました。
①ベリンボロを細分化する
本教則では、ベリンボロを最初に6つに分類して、後半はマットに背中をついた相手のリアクションを2つに分類しています。

技ができない原因は主に2つあります。
①技そのものの精度が低い
②技を出すタイミング(シチュエーション)が間違っている
スパーで技ができないとき、多くは②が該当します。ベリンボロがうまくいかない人は、
技の動きはできていても相手の姿勢や重心に対して適切な対処ができていないことが多いです。
それを解決してくれるのが本教則のこのベリンボロシステムです。ベリンボロに対する相手のリアクションを分かりやすく細分化してくれているので、ベリンボロを出す正しいタイミング(シチュエーション)を理解することができます。
本教則を見れば、ベリンボロがうまくできない理由が分かるかもしれません
(例)
・相手の重心が遠いのに無理にのせようとしていた
→ベルトドラッグやトップテイクを狙うべきだった
・相手が手をポストしているのにスタックしようとしていた
→スタックではなく相手を自分の上にのせるベリンボロをするべきだった
・相手の奥足が遠いのに無理にラダーボロを狙うべきではなかった
→ダブルレッグボロに切り替えたり、トップテイクを狙うべきだった。
②相手の背中を向けさせる
教則内では「相手に背中を向けさせる」と説明しています。
相手の重心や姿勢に合わせて背中を露出させていくというコンセプトで攻めます。

以下手書きで失礼します。
・相手が手をマットにポストしている
→相手の下に入る(相手を上にのせる)ことで背中を露出させる。
・相手が背中マット(丸くなっている)
→スタックすることで背中を露出させる
・相手が背中マット(アーチしている)
→相手の下に入る(相手を上にのせる)ことで背中を露出させる。
・相手が遠い側の手をポストしている
→相手が自ら背中を見せているのでそのままバックテイク
③重心の位置に向かって崩していく
教則内で「相手の重心に向かって崩していく」と説明しています。

重い部分(重心の位置)を強引に持ち上げるのではなく、軽くなっている部分を持ち上げたり送ったりしてポジションを取ります。あるいは、自分が動くことでポジションを取ります。
・手ベースの相手の重心は腰にある
→腰を持ち上げるスタックはできない。
→相手の重心を自分の上にのせるベリンボロを使っていく
・背中マット(丸くなっている)の相手の重心は背中~肩にある
→腰が軽くなっているのでスタックしていく
・背中マット(重心が遠い)の相手の重心は遠い側の腰にある
→腰を浮かすスタックも自分の方にのせるのも難しい
→自分が上になる(トップボロ)
・背中マット(アーチ、背中伸びている)の相手の重心は腰にある
→腰が重いのでスタックは難しい
→相手の重心を自分の上にのせるベリンボロを使っていく
④コンビネーションとシステムで攻める
チャプター3、7、12、14ではシチュエーションの細分化とコンビネーションについて話しています。
それらを整理してみます。



一つの技ですべてを解決しようとすると相手はディフェンスが簡単になります。
相手の姿勢に合わせてコンビネーションとして組み合わせることで威力が倍増します。
シンプルな例を挙げてみます。
前重心ならカラードラッグ
↕
後ろ重心ならアンクルピック
片方だけならディフェンスは簡単です。「相手はカラードラッグ狙っているから後ろ重心で耐えれば大丈夫だ」「相手はアンクルピック狙っているから前重心で耐えれば大丈夫だ」
コンビネーションとして使うと相手は「前重心にしたらカラードラッグされるし、後ろ重心だったらアンクルピックされてしまう、どっちを選んでもやられてしまう」というジレンマが生まれます。
ゴードンライアン選手はこの概念を「ジレンマゲーム」と呼んでいます。
大柳先生は「相手を忙しくさせる」と表現しています。
「コンビネーション」とは「ただシチュエーションに技を当てはめるだけではなく、組み合わせて相手を忙しくさせることで主導権を取るシステム」です。

本教則がオススメの方とその理由
①圧倒的な実績と指導歴、説得力
大柳選手ご自身の実績はもちろん、経験豊富な指導力も一流です。
理論的なインストラクションは非常に分かりやすく説得力があります。
②短い。凝縮されている
ベリンボロは覚えることが多く、教則もボリューミーになりがちです。海外の教則だと10時間越えのものもあります。
さすがにそれらを見るのは大変です。かといってYouTubeの10分程度の動画ではベリンボロを習得するのは無理です。
本教則はベリンボロをシステムとして理解するために必要なことを1時間にコンパクトに収めてくれています。
非常にありがたいです。
ベリンボロを、「1時間で」「大事な部分だけ」「日本語で」学べるのは非常にありがたいです。
③ベリンボロを理屈として学べる
ベリンボロは動画を見ただけでは何をやっているか分からないでしょう。それらを理屈として整理して説明しています。
教則を見れば「こういう仕組みの技だったのか!」となること間違いなしです。
大柳先生の言語化力は卓越しており、感覚ではなく理論として技を理解したいという人に最適だと思います。
④明確な名称と細分化
本教則ではベリンボロをシチュエーションごとに細分化して名称をつけてくれているので整理して理解しやすいです。
⑤システムとして学べる
・「動きの意味」(技のコンセプト)を学べます。単なる技紹介ではなく「なぜこの動きをするのか」「この組手の意味は何か」といった技のコンセプトが学べます。技のコンセプトが理解できれば応用が効きますし、失敗したときになぜうまくいかなかったのかの振り返りができます。
・「技の立ち位置」(使うべきシチュエーション)を学べます。本教則では各チャプターの最初に「この技は相手が〇〇したときに、△△するために使います」のように技の立ち位置を説明してくれます。
・「技をシチュエーションに当てはめる」感覚や「コンビネーション」を身に付けることができます。
これらの「システムとして学ぶ」ことは他の技にも応用が効くコンセプトです。
相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
【ガード系】
ベリンボロにエントリーするためにガードのテクニックを習得したいです。
・デラヒーバ
→デラヒーバでの「相手に尻もちをつけさせる」までのパートを学ぶ必要があります。
オススメの教則は「デラヒーバ再構築」です。
↓セット販売もあります
・相手に尻もちをつけさせるガードやスイープ
→草刈り、ワンレッグエックスのスイープ、70/30、リバデラからのキスオブザドラゴンなど。
→スイープを嫌がってきた相手にベリンボロは取りやすいです。
【クラブライド】
ベリンボロの親戚のような技です。相手がベリンボロを警戒して膝を胸に引き付けるとシャロ―フックやウェッジが入らないです。そういったときに空いた腿の後ろにフックを入れるクラブライドを狙います。
これもコンビネーションです
お腹を閉じる=腿裏スペースできる→クラブライド
↕
膝裏スペース空けない=お腹にスペースできる→ベリンボロ
【ライイングレッグドラッグ】
これもベリンボロと相性がいいです。
腰が遠くなって相手をめくれなくなってしまったときにトップテイクするオプションとして持っておきたいです。
トップを取ったときにいい形で攻められます。
【足関節技】
ベリンボロは相手の前に足を露出している&相手の足が自分の前に露出しているので、レベルが上がってくると足関節の知識は必修科目になります。
フットロックやトゥホールドなどを狙うチャンス(狙われるチャンス)が発生するのでアタックとしてもディフェンスとしても学ぶ必要があります。
ツイスターフックが入った形(トラックポジション)からはカーフスライサー(膝固め)も狙えます。
【ツイスター】
教則内でも扱っています。ベリンボロとツイスターはセットで覚えておきたいです。バックの攻防の必修科目です。
【トップのスマッシュ系パス】
チャプター11で触れているトップテイクからのアタックを掘り下げておくとトップテイクの後に優位に試合を展開できます。
・トップのオクトパス(後ろ袈裟)
・ロングステップ・スマッシュパス
・マウントテイク
・肩固め
・ボディロック
など
使ってみた感想
・振り返りの質が上がる!
ベリンボロをスパーで試して失敗しても「なんでうまくいかないのかなあ」となる人は多いでしょう。自身もそうでした。
本教則を見れば振り返るときに「このとき正しい技を当てはめていただろうか?」という視点が生まれます。その視点でスパーの振り返りをすると、「なんでうまくいかないのか」が分かるようになるので、ベリンボロが上達している実感があります。
大柳先生は「技がかからないと思ったら、その技が正しくできているのか?適切なシチュエーションを作れているのか?もしくは違ったシチュエーションに対して技を当てはめようとしているんじゃないか?ということを振り返ってもらうとポジションが習得しやすくなると思います」と言っていました。
・重心と姿勢をよく見るようになった!
相手の姿勢と重心がどこにあるかをよく見て(感じて)攻めると成功率が上がる実感があります。
・そのシチュエーションに持っていくのも技術のうち!
前作の「デラヒーバ再構築」で大柳先生は「シチュエーションに当てはめるという感覚が大事です。そのアタックがかかるシチュエーションを作れるかというのも技術に入ります。」と言っていました。
ベリンボロでバックを狙うとき、一度トップテイクのプレッシャーをかけることで相手に欲しいリアクションを取らせることができます。「バックを取りたいならバックを取れるようなシチュエーションに持っていく」という視点が生まれました。
・ベルトドラッグ意外と使う!
白帯青帯相手のスパーだと相手が良く分からず背中を向けて逃げるリアクションを取ることが多いです。そこで無理に回る動きをして逃げられることが多かったのですがベルトドラッグを使うとポジションを取れました。
・とりあえずベーシックベリンボロとシャロ―フック!
いろんなバリエーションがありますが、自分はまずシャロ―フックを使ったベーシックベリンボロとスタックボロを練習しました。フックを支点にテコを効かせて膝を締める動きが難しいですが、これができるととりあえずシステムが形になってきた気がします。トップボロやウェッジボロなどのバリエーションにもつなげやすかったです。
・カウンターが取られない!
シャロ―フックを身に付けることでフレームが入るのでカウンターのバックテイクが取られなくなりました。
・トップになることも多い!
実際のスパーだと、バックを嫌がる相手にトップを取る形がけっこうあります。
バックを取り切れないのは自分の技の精度が低いのもあるんですが……
ベリンボロからのトップテイクはレスリング的な攻防やスクランブルを起こさずトップを取れます。
さらにトップを取った時の形がとても良いです。優秀なスイープとして使うことができると実感しました。
まとめ
自身の経験としても、習得するのは大変でしたがベリンボロができると柔術がより楽しくなります。
初めてベリンボロが成功したときの喜びは今も覚えています。
「おお!できた!」の感情はいくつになっても嬉しいものです。
この教則を見てベリンボロをやればその感情を味わえると思います。
ベリンボロができる柔術人生とベリンボロのない柔術人生なら前者のほうが柔術を楽しめるはずです。
自分の柔術の可能性を広げるためにぜひ手に取ってみてください!
初心者でイチから丁寧に学びたい人、強くなりたい人、柔術をより楽しみたい人、指導をしている人、
あらゆる人にオススメです!
本や教則は「読みたい!見たい!」と思ったときが一番頭に入ります。鉄は熱いうちに打て!です。
興味を持った方はこちらからどうぞ!
大柳先生ってこんな人!
最後に。インタビュー時に大柳先生のパーソナルな部分についても質問したので、ここでご紹介します。
好きな飲み物:コーヒー、アイスティー、ビール
好きな食べ物:トースト、カレー、寿司、甘いもの
好きな本:アラン『幸福論』
最近読んだ本:ゲド戦記
好きな映画:『PERFECT DAYS』
最近観た映画:『ひゃくえむ』『坂本龍一 Diaries』
好きな漫画: 『バガボンド』
最近読んだ漫画:『チェンソーマン』
趣味:読書、喫茶店、散歩
マイブーム:コーヒーを淹れる
好きな選手(尊敬している選手、目標にしている選手):たくさん影響を受けたのは橋本兄弟、マイキー・ムスメシ、アイザック・ドーダーラインです。
柔術の好きなところ:知らないことがたくさんあって、知ることでものの見え方や感じ方が変わる瞬間があります。

