本記事はカウアン・タニノ選手の教則『ワールドクラス・パスガードvol.2:オープンガード』の解説記事です。前作『vol.1パスガードの基本』の続編にあたります。本作では代表的なオープンガードへのパスガードをレクチャーいただきました。

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この記事がおすすめの方
- ラッソー・スパイダー、デラヒーバ、片襟片袖を解除できない方
- ボトムからサブミッションやスイープをよく取られてしまう方
- トレアドールやレッグドラッグの足をさばくパスガードを強化したい方
- オープンガードからプレッシャーパスへのつなげたい方
※すでに購入した方が復習として使える記事になっているのでぜひご活用ください。
ブラジリアン柔術紫帯。noteにて「柔術哲学」ブログを運営。フローチャートを用いた教則の解説レビュー記事は40本以上。柔術も文章を書くことも好きです。
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講師紹介
カウアン・タニノ選手はアンドレ・ガウヴァオン氏が率いる世界最高峰の柔術チーム「ATOS柔術アカデミー」に所属する柔術家です。その実力は茶帯ながら黒帯トップクラスの実力を持つ選手として、世界中から高い評価を受けています。
これまでに残してきた主な戦績は以下の通りです。
- 紫帯
- パンアメリカン選手権優勝
- ヨーロピアン選手権優勝
- 世界選手権優勝
- 茶帯
- アジア選手権優勝
- ノーギ世界選手権優勝
全体像
今回の作品は3編に別れています。スパイダーラッソー、デラヒーバ、片袖片襟の強力な3つのオープンガードへのパスガードを紹介します。
最初に各ガードに入ってしまった時の注意点とベースの取り方について説明して、相手の手足の位置やリアクションに応じたパスを説明しています。
世界トップレベルのテクニックが載っている実戦的で強力なテクニックが学べます。すでにお持ちの方も以下のフローチャートをご確認ください。
1.ラッソースパイダーの攻略
ラッソースパイダー編 37:22
- ラッソースパイダーの注意点
- シャローラッソースパイダーへのトレアドールパス
- スパイダーグリップを利用したトレアドールパス
- ラッソーへのステップパス
- トレアドールパスからレッグドラッグパスへの移行
- ラッソーへのプレッシャーパス
- ラッソーへのロングステップパス
- ラッソースパイダーにはトレアドールパスを選択する理由


2. デラヒーバの攻略
デラヒーバ編 47:59
- デラヒーバパスの基本と注意点
- パンツグリップを利用したプレッシャーパス
- ワンレッグXエントリーに対するカウンターパス
- トレアドールパス
- カウンターニーカットパス
- プレッシャーパス
- ダックアンダーパス


3. 片襟片袖の攻略
片襟片袖編 29:28
- 片襟片袖パスの基本と注意点
- 足回しパス
- バックテイク
- 相手が足を伸ばしてきた場合
- 担ぎパス(スタックパス)
- レッグドラッグパス
- ニーカットパス


本教則の哲学(コンセプト)
私がこの教則から感じたコンセプトは以下です。
「ガード解除とパスのセットアップが一体化したシームレスなパスアタック」
基本的に柔術では「リテンションのチャンス=つなぎ目」という法則があります。攻防と攻防のつなぎ目が戻すチャンスになります
上手い人はガードを解除されても、相手がパスに移行するつなぎ目でリテンションしてきます。ガード解除してもなかなかパスまでたどり着けません。パスのセットアップの組手を作ろうとしてもすぐにガードを作られます。

本教則のテクニックが効果的なのは、このボトムのリテンションのチャンスとなるつなぎ目がない(シームレス)ことです。
ガード解除とパスのセットアップが一体化しているので、パスを解除したらすぐにパスに移行できます。

シームレスなアタックとは? 実例で紹介!
一例として、デラヒーバの②のパスを見てみましょう。

いわゆるシンカットパスと言われる形で、デラヒーバのフックのシン(=スネ)を潰してデラヒーバを解除する形です。
しかしこれは相手と距離ができやすく、手や足のフレームで戻されてしまうことが多いため、シンカットでデラヒーバを解除してもパスまでたどり着けないことが多いです。

本教則ではシンカットから相手のフレーム(ニーシールド)が入ってこないようにするテクニックが紹介されています。
- ①ガード解除(シンカット)
- ②パスのセットアップ(ニーカットの組手と位置取り)
を同時に行っています。

結果的にシンカットでデラヒーバを解除したあとにオープンガードに戻されることなくシームレスにニーカットへ移行できます。
本教則がオススメの理由
①圧倒的な実績と指導歴、説得力
カウアン・タニノ選手にはキッズ〜アダルトの圧倒的な実績があり、世界のトップクラス相手に使ってきたパスガードには説得力があります。
②満点のボリュームと充実の内容
約2時間の中に、片袖片襟、デラヒーバ、スパイダーラッソ―のパスがたっぷり収録されている見ごたえ十分な内容です。
世界のトップクラス相手に通用するディティールを学べます。
③ガード解除とパスのセットアップをセットで学べる
教則によっては「このパスはこことここを持ちます」みたいにサラッと説明しているだけのことが多いです。
でも実戦ではむしろガード解除とパスのセットアップ(組手争い)の方が重要になってきます。しっかりセットアップ出来たらパスは8割成功しているといっても過言ではありません。
そのパスで最も重要となるガード解除&セットアップの部分を重点的に学べる本教則は、見た人のパスのレベルを大きく向上させてくれます。
④ベースとディフェンスの勉強ができる
アタックをするためにはまずディフェンスとベースができないといけません。その部分を学べる動画は多くありません。本教則では各ガードに対するベースの取り方と注意点を丁寧に説明しており、とても勉強になります。
⑤プレッシャーパスをするにはオープンガードを突破しないといけない→オープンガードパスは必修科目
「足をさばくオープンガードパスよりも、密着系のパスが得意」という人は多いでしょう。でも密着系のパスにたどり着くにはオープンガード相手の足のフレームを突破する必要があります。
この教則はオープンガードパス(遠距離)から密着系パス(近距離)に距離を詰めるための手段も多く収録されているので、プレッシャーパスをやりたい人にとってもオススメです。
相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
・ハーフパス、密着系パス
本教則にもプレッシャーパスは紹介されていますが、実戦だとトレアナやレッグドラッグなどを仕掛けたときに、ニアパスでハーフガードにつかまることがよくあります。そこからの展開も習得しておくとより強力なパスシステムとなります。
・バックテイク、カメの攻防
オープンガードパスは距離があるので、相手が背中を向けてエスケープしてくることがあります。背中を向けてきた相手へのアタックも身に付けておくと便利です。
個人的に好きなテクニックの紹介
全てのテクニックを紹介すると長くなってしまうので、自分が見て試して特によかったものをいくつか紹介します。
各ガードの注意点、パスの考え方
- ラッソースパイダーの注意点
- デラヒーバパスの基本と注意点
- 片襟片袖ガードパスの基本と注意点
- ラッソースパイダーにはトレアドールパスを選択する理由
各ガードに対する基本的なベースの取り方や組手の注意点を説明しています。白青帯の人ならこのチャプターを見るだけでもトップの精度がかなり上がると思います。



5.トレアドールパスからレッグドラッグパスへの移行(ラッソースパイダー編)
スパイダーラッソ―編は、レッグドラッグを多く紹介しています。レッグドラッグは足を流せても手のフレームや遠い足のリテンションが処理できず戻されてしまうことが多かったのですが、カウアン選手のレッグドラッグの腰を殺すディティール、スペースを潰すディティールが非常に有効で先日のスパーで試したらレッグドラッグでたくさんパスが取れました。

7.ラッソーへのロングステップパス(ラッソースパイダー編)
ロングステップは足を抜くところまでいけても、その後抑えきれないことが多かったです。このテクニックでは相手の上半身を殺すための頭の位置や足を抜いた後の足の使い方などが丁寧に説明されているのでパスしきれないということが減りました。

4.トレアドールパス(デラヒーバ編)
デラヒーバの解除をした後に相手が、リテンションしてデラヒーバフックを付けてこないようにする体重のかけ方とスネの角度、マットの足裏の付け方などが非常に細かくて勉強になります。デラヒーバも解除はしやすいですが、すぐに戻されることも多いです。

2.足回しパス(片襟片袖編)
組手のテクニックが非常に勉強になります。同じ襟でも高い位置(頭に近い位置)と低い位置(腰に近い位置)で意味合いが変わってきます。この足回しパスの組手も絶妙でした。相手の手のフレームを作らせない強力な組手です。

5.担ぎパス(スタックパス)(片襟片袖編)
かつぎパスは足裏が当たらず腰が浮いているので、足の効くオープンガーダーに効果的です。終始プレッシャーが緩むことなく、相手が後転したり、足を流された瞬間に戻すようなリテンションができません。相手の頭の上を通過する形の非常にタイトな担ぎパスです。

使ってみた感想
1. ガード解除しても戻されない!ガード解除のあとは自分のターンが続く!相手のターンにさせない!
先述したように、本教則のテクニックはガード解除とパスのセットアップがセットになっているので、解除したらすぐにパスに行けます。
これまでは「まずガード解除してフリーな形を作ってそこから自分の組手を作って攻めよう」という意識でやっていました。この考え方自体は悪いものではないとは思いますが、うまい相手だと解除してフリーになっても振り出しにもどるだけで、その後またガードにつかまってしまいます。
本教則のシームレスなアタックを使うとガード解除のあとに相手のターンが来ないままパスにいけます。
2. レッグドラッグが取れる!
先述したようにレッグドラッグをするとき、足を流せてもその後の処理が甘く逃げられることが多かったです。本教則のスペースの潰し方や足を戻させない組手や位置取り、腰を殺すテクニックを使ったらレッグドラッグでパスを取り切れました。
3.安心してベースを取れる!
各ガードの注意点を意識すると、相手のアタックを早めに処理できるので余裕を持ってトップゲームを展開できます。
4.組手一つでこんなに変わるのか!
襟を持つ位置が変わるだけでプレッシャーのかかり方が全然変わったり、同じ足首でも角度を意識すると外されにくかったり、本教則の組み手のディティールの威力を実感しました。トップ選手はここまで細かくて繊細な攻防をしているんだと感じました。
5.担ぎからのバリエーションが増えた!
片襟片袖編はスタックポジションからの展開が豊富です。タイトに相手を攻めるプレッシャーのかけ方も勉強になりましたが、バリエーションが増えたのもよかったです。相手がセルフフレームを入れたり、背中を見せてきたりしたときの対処ができました。そこからのニーカットへの移行も使いやすかったです。
まとめ
オープンガードパスはトップゲームで必ず取り組む必要があります。
「基本的なガード解除やパスは覚えたけど、実際のスパーだとパスできない。パスとガード解除のテクニックがつながっていない。トップで自分のターンが回ってこない」
そんな風に感じている人はぜひ本教則のテクニックを使って、相手にリテンションの機会を与えないシームレスなパスアタックを身に付けてください。
本や教則は「読みたい!見たい!」と思ったときが一番頭に入ります。鉄は熱いうちに打て!です。興味を持った方はこちらからどうぞ!
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