デラヒーバアンダーへのパスガード(対処)

BJJ LABの延藤です。今回のコラムは、「デラヒーバアンダーへの対処」について。

実はデラヒーバアンダーの「作り方」「アタック」を解説する動画はあっても、デラヒーバアンダーに対する「防御」「対処」の動画はありません。試しにYoutubeで調べてみてください。

≫Youtube検索「デラヒーバアンダー_対処」

先月のDEVILOCK杯に出場して2勝して優勝しました。決勝で対戦した方はデラヒーバアンダーを得意としていて、事前に北出先生(パラエストラ川崎代表)に質問してデラヒーバアンダーの対策を練っていました。決勝では2回アタックを防いで、3回目でパスガードにつなげることができました。

講師でもデラヒーバアンダーへの対策・注意点を即答できない人も多いのではないでしょうか?

というわけで、今回は意外と知られていないデラヒーバアンダーの対策についてご紹介します。

筆者紹介:延藤素康

BJJ LABスタッフ。40歳(柔術歴3年半)。2025年8月から紫帯。今年の通算成績は21勝4敗。白、青帯時代はデラヒーバを得意ガードにしていました。

教則の紹介

BJJ LABから発売中の橋本知之選手の『デラヒーバ研究室』にはデラヒーバアンダーからのアタックが解説されています。役立つ内容なのでぜひ。

デラヒーバアンダーとは?

デラヒーバアンダーを防ぐにはデラヒーバアンダーからの攻撃を知っておかねばなりません。

デラヒーバアンダーとは、デラヒーバを作り、さらに腕(肘)で相手の足首をアンダーフックした形です。

トップの相手の右足に対して、(左腕)アンダーフック、(左足)デラヒーバフックをつける、いわば2on1の状態です。簡単に外されることはありません。

デラヒーバアンダーからの攻撃は2ルート

ここから狙えるのは、①(通常のデラヒーバと同じく)相手の背中側に回ったり、②相手の股下に潜ってウェイターガードでスイープorバックテイクの2つルートです。

デラヒーバアンダーを使うべきタイミング

通常のデラヒーバとの違い(攻撃面)

①背中側に回る(ベイビーボロ、ベリンボロ)を狙うのであれば、通常のデラヒーバの方がグリップや上体のブリが使えるので強力です。上体と足が自由に動かせるので、さまざまな方向に相手を崩すことができます。

また、パンツを持って柔術立ち(テクニカルスタンドアップ)してスイープを狙う場合も、アンダーフックをしていると起き上がることができません。

では、どういう場合にデラヒーバアンダーが有効なのか?

固く守りたい、フックを落とされそうな時の対処はアンダーが有効

よくあるケースとしては、通常のデラヒーバを仕掛けたものの、相手が膝を外に開いて、フックを落とされそうな時。こういう場面ではアンダーフックでサポートすることで相手の足の固定を強化できます。防御力に優れています。相手もアンダーを作られると、簡単に足を抜くことができなくなります。

ウェイターで相手の真下に潜れる

デラヒーバアンダーは、腕でアンダーフックを作っているため、相手の真下に潜りやすい構造になっています。

デラヒーバアンダーの弱点は機動力がないこと

強力なデラヒーバアンダーにも弱点があります。それは機動力(モビリティ)の悪さです。

デラヒーバアンダーは相手の片足に対して自分の手足パーツを集中させ、さらに左側に体を傾斜させます。これはモビリティ(機動性)が非常に悪い。

そのため、崩しは右足で相手の膝裏を蹴るか、地面を蹴る動きに依存します。通常のデラヒーバに比べると、動ける範囲が狭いです。

また、体を強く丸めた状態になるため、そこから移動すること自体が難しい。

これがデラヒーバアンダー最大の弱点です。

デラヒーバアンダーを防ぐには外側の足を止める

ということで、結論としては、相手の右足を封じるのが最初の有効策になります。

デラヒーバアンダーを作られると、デラヒーバフックがついている足(右足)に集中しがちですが、まずは落ち着いて反対側の足(通常は相手の右足)を封じます。

具体的には、裾をピンして自分の体の外側ラインに相手の足が出るように張ります。

これにより相手のエビ移動を防ぎ、崩されるリスクを減らせます。またデラヒーバフックを外さないといけないので、ポスチャー(姿勢)は高めに保ち、上から体重を使ってプレッシャーをかけていきます。

注意点:相手の足を外側にする場合も脇には抱えない

前述のとおり、相手の右足を自分の外側に外すのが有効です。

とはいえ、相手の右足を脇に抱えるのは不十分です。旋回に巻き込まれます。

倒されると、そのままベリンボロに入られます。(これでやられる人は多い)

デラヒーバフックを落とし切るまで、反対側の足をまたがない(通常のデラヒーバと異なる!)

さらに、フックが外れていないうちに足をまたがないことにも注意です。

通常のデラヒーバでは相手の右足をまたぐのが定石ですが、デラヒーバアンダーでは事情が異なります。

相手はアンダーフックから真下に潜りやすい状態です。

安易にまたいでしまうと崩されやすく、ウェイターガードに入られ、後方に倒されます。

こちらの左足の膝裏にフックを作られると崩されます。

もし相手が右足をこちらの体の内側に入れてきたり、股下に潜ってきそうな場合は、まずは体勢を低くして相手が真下に潜るスペースを狭くします(埋める)。

徐々に下がります。ここでは攻めません。スペースがある状態で攻めると潜られます。

フックを外す、または相手の腕と足を潰してから通常のデラヒーバ処理へ

前重心を保ったままプレッシャーをかけ、ジリジリとデラヒーバフックを解除していくことが重要です。

体を外に開いてフックを外す、もしくは相手の左側の腕と足を同時に潰します。

腕まで潰されそうになると、相手もアンダーフックを解除せざるを得ません。

そこで通常のデラヒーバパスにつなげていきます。

通常のデラヒーバガードの攻略については、各種教則で詳しく解説されています。(ニーカット、スマッシュパスが多い)

ぜひお試しください。

サイエンスオブスマッシュパス(山中健也)

【おまけ】対策するにはまずは自分で攻撃をやってみる

今回、試合直前に北出先生から対策を教わってすぐ試合で実践できました。実は、僕は以前試合でデラヒーバアンダーを使ったことがあります(うまく防御されました)。

また練習でもよく使うことが多かったため、攻撃側の意図がおおよそわかります。

やはり自分で使った技だから対処もしやすいというのはあります。いきなり対策を練るよりも、まずは自分でデラヒーバアンダーを使ってみるのをおすすめします。

以上です。

実はBJJ LABのコラムでテクニックについて書くのは初めてです。お役に立てれば幸いです。