「フレーム(Frame)」を理解すれば、柔術が上手くなる!

柔術の試合会場でこんな声を聴いたことはありませんか?

「フレーム! フレーム!」

またはジムで「フレームを入れた方が相手を止められるよ」とアドバイスを受けた方も多いのではないでしょうか?

この記事では、柔術含む寝技の攻略で非常に大切な「フレーム(Frame)」の概念について深掘りしています。

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  • フレームと言われてもイマイチ分からない
  • フレームをもっと上手に使いたい!
  • 柔術のコンセプトを学びたい!
筆者紹介:下前快喜(しもまえかいき)

BJJLABのスタッフ。ブラジリアン柔術茶帯。(2024年5月現在)SNS運用や教則のプロデュースなど、多様な仕事を担当しています。グラップリングも好きです。教則動画を見るのが好きで、累計100本以上は視聴しています。

フレームとは?

フレームの定義

私はフレームを下記のように定義しています。

「相手の前へのプレッシャーを止めるモノ」

白道着のボトムの両腕がフレーム

トップの相手はパスガードを狙うために前進して距離を詰めてきます。

この前進、前へのプレッシャーを止めるモノがフレームです。

たとえば上記写真ならば、両腕のフレームを使っています。

自分と相手の間にフレームを入れないと、相手の前進は止まりません。

プレッシャーで距離を詰められてパスガードされてしまいます。

逆にガードが上手い方は、フレームを有効活用し、相手の前進を止めて、自分の得意な距離感をキープします。

代表的なフレーム

フレームにはたくさんの種類があります。

代表的なフレームは腕、前腕、足、膝ですが、頭や肩がフレームになる場合もあります。

どのようにフレームを入れるかは、①相手と自分との距離②自由に使える四肢によって変わります。

たとえば、相手との距離が近い場合はいきなり長い足のフレームを入れることができません。

こういった場合は膝のフレーム、いわゆるニーシールドを入れることができます。

足のフレームを入れたい場合は、ニーシールドで相手との間にスペースを作ってからです。

またトレアドールパスのように両足をコントロールされている状況では、足のフレームを第一に当てることはなかなか難しいです。

トレアドールで両足を掴まれている場面

こういった場合は、落ちてくる相手の肩を止めるために腕のフレームを使って、相手が距離を詰めてくることを防ぐのがいいでしょう。

補足ですが、上半身よりも下半身のほうが筋肉量が多いため、下半身のフレームのほうが強いと言えます。

フレームを正しく使うために必要なこと

ただ単にフレームを入れるだけでは、相手のプレッシャーを止めることはできません。

重要なのは、しっかりと伸ばした状態をキープすることです。

フレームは曲がっていると十分な効果を発揮することができません。

曲がったフレーム

これは腕のフレームを腕立て伏せに置き換えた例がわかりやすいでしょう。

腕が曲がっている状態よりも腕を伸ばした状態の方が、長時間同じ体勢をキープできます。

同様に、相手のプレッシャーを止めるときも腕をしっかりと伸ばした状態をキープした方がフレームの効果を十分に使うことができます。

フレームが上手い人は筋肉よりも骨(骨格)で相手を止めるイメージを持っています。

ただし、闇雲にフレームを伸ばしてしまうことは避けてください。

たとえば、背中を向けたバルボーザエビの状態で腕をビンビンに伸ばしてしまうと簡単に腕十字を取られてしまいます。

バルボーザエビ:お尻を上げて相手に背中を向けるガードリテンション

そういった場合は極められないことを一番に考え、臨機応変な対応が必要になります。

豆知識:フックとフレームの違い

反対に、トップからの立場でも考察してみましょう。

パスガードを狙って距離を詰める方法は、前進だけではありません。

「横に回る」「一旦後ろに下がる」も有効です。

この2つはフレームを外す際に有効なアタックとなります。

この「横に回る」・「後ろに下がる」を防ぐモノは「フック」と呼ばれます。

フックにはデラヒーバフック・ラッソーなどが該当します。

フレームが重要な場面

では、どのような場面でフレームが重要になるのでしょうか?

私は大きく分けて2つあると考えています。

  1. ガードリテンション
  2. パスガード

ガードリテンション

多くの人がフレームのアドバイスを受ける場面は、ガードリテンションでしょう。

「ガードリテンション」とは自分のガードをキープすることです。

相手のパスガードをとにかく防ぎます。

このとき、フレームがとても大切になってきます。

パスガードをするために、相手はグリップカットやフレームを解除してきます。

それに対してカットやフレームを解除されたままでは、距離を詰められてただパスガードを待つだけです。

そのため、ガードをキープするためには距離に応じたフレームを再び作る必要があります。

相手のパスガードに対して、常に適切なフレームを作り続ける。

「単に相手のパスガードをしのぐ」意識から、「フレームを作り続ける」意識に切り替えることで、ガードリテンションは格段にレベルアップします。

前述のフック、リーディングエッジ(後述します)を意識すると、さらなるレベルアップが見込めます。

ぜひガードリテンションが上手くいかない方は、意識から変えてみましょう!

パスガード

ガードリテンション(ボトム側)で大切なのがフレームを作り続けることならば、パスガード(トップ側)において大切なのはフレームを外し続けることです。

特に足や腕といった大きなフレームは、絶対に外さなくてはいけません。

サイドコントロール(サイドの抑え込み)を例にすると、わかりやすいです

自分と相手の間には大きなフレームが入っていません。

逆にニーシールドやキックスパイダーのようなフレームが入っている場合は、審判はパスガードの3点と判断しません。

相手のフレームを外し、距離を詰め、相手を押さえ込む。

それがパスガードであると私は考えています。(もちろんフックも外す必要がありますが)

なお、フレームの外し方としては、下記3つの例があります。

  1. リーディングエッジ
  2. 力の方向を変える
  3. 体重の強弱を変える

上記3つは私が開催したジョセフ・チェン選手のセミナーで学びました。

リーディングエッジについては後述しますが、さらに深くまで学びたい方はジョセフ・チェン選手の動画をご視聴ください。

後、Rau Drag(ラウ ドラッグ)は超絶オススメのフレームの外し方です。

Jason Rau本人の動画ではないですが、よろしければぜひ。

リーディングエッジも意識してみよう!

先ほどから何度か登場している「リーディングエッジ」

多くの方が初耳ではないでしょうか?

これは英語では”Leading Edge”と記載されるコンセプトです。

私は岩本健汰選手から学びました。

岩本選手はジョセフ・チェンから学びました!

リーディングエッジを意識すると、フレームへの理解をさらに深めることができます。

トレアドールパスを例にしてみます。

トップの選手は両裾を流して、肩を胸に落とすようにしてパスガードをしてきます。

ボトムの選手は自然と肩に手を当てて両腕のフレームで止めるでしょう。

なぜ肩を止めるのか?

それは肩が自分と相手の間においてもっとも距離が近くなる位置だからです。

では、肩をフレームで止められたトップの選手は次に何をしてくるでしょうか?

一つの選択肢として、フレームがない膝で距離を詰めてニーオンベリーを狙えます。

その場合、肩に代わって膝がもっとも距離が近くなる場所にきます。

すると、今度はボトムの選手は膝に対してフレームを切り替える必要があります。

次にトップの選手は足を止められたので、頭で距離を詰めてきます。

このようにして、相手と自分の間でもっとも距離が近い体の部位に注目することが「リーディングエッジ」のコンセプトです。

つまり、ボトムの選手は「もっとも相手と距離が近い場所」を止め続けてガードリテンションをはかります。

逆にトップの選手は距離を詰めた場所をフレームで止められた際には、止められていない場所で距離を詰めていく。こういった攻防が展開されます。

人によっては無意識にやっている動作かもしれません。

しかし、改めて言語化して意識してみるとまた違った景色になっておもしろいです。

試しにYoutubeで試合の動画を見てみると、こういった攻防がたくさん見つかります。

フレームに合わせてぜひリーディングエッジも意識してみてください!

ここまで読んだあなたが見るべき教則

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

下前が考えるフレームの概念や大切さについてご理解いただけたでしょうか。

さらにフレームに関して理解が深まる教則を3本オススメします。

手前味噌ですが、BJJ LABからの教則である点はご了承ください。

ガードリテンション大全 vol.1&vol.2 橋本知之

ボトムの視点からでは、橋本知之選手の『ガードリテンション大全』がベストです。

vol.1では

・デラヒーバを跨がれたとき

・トレアドールパス

vol.2では

・クロスグリップパス

・ノースサウスパス

・担ぎパス

へのリテンションが学べます。

芸術的な橋本選手のガードリテンションをみっちりと学べます。

橋本選手のガードといえば、この動画もお忘れなく。

BJJ LAB以外の教則では、マイキー・ムスメシの『Power Switch Guard Retention And Genius Back Takes』がオススメです。

ガードリテンションとバックテイクが収録された教則です。

少し古い教則ですが、相手のエネルギーはどこにあるのかを重点的に意識して説明してる素晴らしい教則です。

特にニーカットに対するリテンションには惚れ惚れします。

私自身、ガードリテンションが雑になっていると感じた際には見返す教則です。

「BREAKING FRAMES」〜パスにおけるフレーム解除の原理原則〜

続いて、トップの視点からの動画です。

ホベルチ・オダ選手の『BREAKING FRAMES』はまさにこの記事の内容に沿った教則です。

フレームの解除に焦点を当てた教則であり、フレームを外すべき理由や相手の足回りに対する対応などフレームの解除はひと通り学べます。

パスガードが成功しない原因は、フレームを適切に外せていないことにあります。

ホベルチ選手はシンプルかつ効果的な外し方のみ説明しています。

今までよりも格段にパスガードの成功確率が上がります。

ぜひ本記事と合わせて学習してみてください。

ルースパスシステム 岩本健汰

こちらもトップの視点から。

コラム②でも述べた「リーディングエッジ」のコンセプトをみっちり学べる教則です。

リーディングエッジ以外にも、ルースパスやキャンピングポジションなど重要なコンセプトが詰まった素晴らしい教則です。

パスガードをするトップの視点からフレームを考察できる教則ですので、この記事の内容と擦り合わせて視聴してみてください。

ちなみに、私が受け手です。その点もお楽しみください(笑)。

(ひたすらリテンションして腹筋が崩壊しています!)

フレームを有効活用しよう!

いかがだったでしょうか?

本日は寝技の攻略で大切な「フレーム(Frame)」について深掘りしてみました。

この記事を通じてみなさんのガードリテンションやパスガードのレベルが向上したら、何より嬉しく思います。

ぜひ有効活用してください!!!

なおこの記事を作成するにあたって、たくさんの選手・先生を参考にしています。

  • アイザック・ドーダーライン
  • マイキー・ムスメシ
  • 橋本知之
  • 岩本健汰
  • ジョセフ・チェン

他にも書ききれないくらいの選手・先生からインプットしたおかげでこの記事を書くことができました。

素晴らしいテクニックやディテールをシェアしてくれるみなさん、いつも本当にありがとうございます。

今後もインプットは続けていきます。

新しい知見がありましたら、随時リライトする予定です。

引き続きよろしくお願いします。

では、また。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!