こんにちは、竹浦です。最近は全国各地の道場を訪れて柔術の縁を広めています。それぞれの地域の良さを感じつつ、柔術というキーワードで現地の人とつながることが楽しいです。
「僕はこういうことがやりたかったんだ!」と新たに自分が入り込めるものが見つかりました。
そんなわけで、今回のコラムは自分のスタイルの見つけ方についてです。
好きなスタイルをやれば良い
『好き嫌いと経営』といえば楠木建さんの有名な著書で、僕も大好きな一冊です。
この本では、有名な経営者と楠木建さんが対談形式で話をし、経営者の動因を形づくるものは「良し悪し」ではなく、その人の「好き嫌い」であると述べられています。
好きを先に見つけるよりも嫌いを徹底して排除していく。嫌いな物を無理矢理やり続けると自分が何を好きかが分からなくなってしまう
とも述べられています。
この当たり前のことが、実際には難しいこともあります。周りの目を気にして好きなことをやらない理由をつけたり、嫌なことを続けたりすることが多いのではないでしょうか?
柔術も同じで、好きなスタイルは長続きしますが、嫌いなスタイルは続かないのです。たとえば、クローズドガードから攻めるのが好きなら続ければいいし、テイクダウンからのパスが好きならそれをやればいいのです。
柔術は自由度が高く、自分に合ったスタイルを見つけやすい競技です。ベリンボロでもキムラでも、自分が楽しいと思うスタイルを追求すればいいのです。YouTubeなどで好きなスタイルを見つけ、それを練習しましょう。そうすれば、自分のやるべきスタイルが見つかるはずです。
人に決められて嫌なスタイルをやっても長く続きません。
「あなたは手足が短いからハーフガードをやりなさい。ベリンボロは無理です」と言われても諦めてはいけません。というか人に決められて嫌なことをやっても長続きせず、下手したら柔術までやめてしまう可能性もあるので好きにやりましょう。
趣味なんだから好きにやるのが一番です。
現実問題は勝ち負けがある
とはいえ、ここで一つ問題が生じます。柔術は競技でもあるので「勝ち負け」という結果が残ります。
『好き嫌いと経営』では、競技のような勝ち負けがつく二元論ではないからこそ好きなことをやり続け、嫌いなことを避けると書かれています。結局、続けた人が残っていくので好きなことをやるのが良いのです。
ところが柔術は試合に出ると勝ち負けがつくし、練習のスパーリングだとしても、勝ち負けを意識するものです。
「練習なんだから勝ち負けを気にしない」とは言ったものですが、これはある程度柔術をやってきた人のポジショントークであり、始めたばかりの人からするとそんな聖人君主みたいなことを言える余裕もないわけです。
「あー、今日のスパーリングで3本も取られたー」
「毎回あの人にパスされるー」
「最後の3秒でやられたー」
とかそういうことを考えるものです。
みんな始めたばかりの頃は絶対にそこを経験しているはずです。
先輩たちに「練習なんだから勝ち負けを気にしない」と言われても「あなたも始めたばかりの時は気にしてましたよね?」と言ってみてください。喧嘩になります。
好き嫌いと得意不得意
というわけで、話を戻すと、好き嫌いだけであれば好きなスタイルの打ち込みをすれば良いのですが、実際問題、スパーリングや試合で好きなスタイルをやってもうまくいかないことが多いのです。
かっこいいモデルが着ている服を見て、「かっこいい!欲しい!」と思って買ってみたものの、実際に着てみると全然似合っていない、なんてことはよくあります。
柔術も同じで、「かっこいい!やりたい!好き!」と思ってやってみたものの、全く通用しないことがよくあります。それでも好きだから何度も試してみるけど上手くできない。
そうしているうちに全然うまくいかない自分に嫌気がさして柔術をやめてしまう、なんてこともきっとあるはずです。
しかし、そこで先生があなたの体型や身体の動かし方を見て、「このガードからのスイープがいいんじゃないかな?」と推奨してくれた技を使ってみると驚くほどよくかかる。こういうことはよくあります。
そのスタイルが好きではないけれど、このスタイルなら勝てる。むしろこのスタイルは疲れるしカッコよくないから嫌いだけど、「勝てる」なんてことが多々あります。
結局、勝ち負けの競技において、一番は勝つことが楽しみなのです。負けてばかりでは楽しくない。好きと言われるスタイルをいくらやっていても上手くできなかったり、やれなかったりすると楽しくないのです。
時期によって変えてみる
「結局、好きなことをやれば良いのか、勝てることをやれば良いのか、どっちやねん!」という話なのですが、どっちも時期によって変えれば良いのです。
とりあえず白帯ではじめたばかりの時は何をして良いのか分からないからYouTubeなどで「カッコいい!やってみたい!」というスタイルを真似してやってみる。三角絞めをやってみたくて柔術を始めてみたという人はきっといるはず。
それなら、とりあえず三角絞めを練習しましょう。
そこから青帯に向けて試合に出るのであれば、一旦自分の好き嫌いは置いておいて一番勝てるスタイルで挑戦する。勝てるスタイルが好きとは限らなくて、好きじゃないけどこのスタイルだとなぜか勝てるからやる。
そして勝って金メダルをもらったり、帯が上がるとそのスタイルが好きになるということもあります。やはり結果が出るのは楽しいものです。
それでも「ベリンボロやクラブライドがやりたい!」と思えば、自分のスタイルは気にせず打ち込みやスパーリングで試してみてください。試合で使えるかどうかは別として。
そこからまた試合に出るとなったら「好きじゃないけど勝てるスタイル」で戦えば良いのです。
結論
長くなりましたが、好き嫌いと柔術というテーマでお送りしました。
何をやるにしても時期で変えていけば良くて、無理して嫌なスタイルをやり続ける必要もないし、好きなことをやれば良いのです。
試合で勝ちたいなら一旦好きは置いてみて、一番勝てるスタイルをやってみましょう。道場の先生や先輩に率直に聞いてみれば良いです。
「試合に勝ちたいのですが、自分に一番合いそうなスタイルって何でしょうか?」と。
そんなわけで、このへんで終わりとします。ありがとうございました。