ブログ『柔術旅 〜BJJ JOURNEY〜』運営者。21歳のときに地元福井のブラジリアン柔術サークルで柔術を始める。その後は東京、大阪、フィリピン、ニュージーランドなど国内外を転々しながら各地の柔術・総合格闘技ジムに所属し大会に出場。現在は関西を拠点に日本各地に赴き大会出場及び出稽古を重ねる。
ブラジリアン柔術は世界中で人気のある格闘技で、老若男女問わず多くの人に愛されています。
しかし、格闘技である以上、怪我のリスクはどうしても避けられません。
この記事では、ブラジリアン柔術歴7年の私が、過去の経験を元にブラジリアン柔術でよく起こる怪我、その原因と予防策について詳しく解説していきます。
ブラジリアン柔術は怪我しにくい格闘技?
ブラジリアン柔術は、他の格闘技に比べて「怪我をしにくい」と言われています。
その理由として、打撃がないことが挙げられます。
キックボクシングなどの打撃系の格闘技と異なり、ブラジリアン柔術は主に関節技や絞め技を駆使して相手を制する競技です。そのため、顔や頭部へのダメージが少ないのです。
また、試合やスパーリングでは「タップ」というルールが存在し、関節技や絞め技がかかっている状態で危険を感じた場合、相手にタップ(降参のサイン)することで技を解除してもらえます。これにより、重大な怪我を未然に防ぐことが可能です。
しかし、怪我がまったくないわけではありません。
慣れない動きや、油断した瞬間に怪我をするリスクは常に存在します。
ブラジリアン柔術でよく起こる怪我
具体的にどんな怪我が発生しやすいのか見ていきましょう。
捻挫
ブラジリアン柔術で最も一般的な怪我の一つが捻挫です。特に足首や手首、膝などの関節部位は、技のかけ合いやポジションのうばい合いの中でひねりやすいです。
捻挫は無理な動き、不意な動作、タップが遅れたなどの原因で発生し、場合によっては痛みやはれをともなうことがあります。軽度の捻挫でも無理に続けると、症状が悪化する可能性があるため、早期の対応が必要です。
打撲
打撲もよく見られる怪我です。スパーリング中の転倒や相手との強い接触で起こります。
打撲は皮下組織が損傷することで発生し、患部にはれや内出血が見られることもあります。軽度で済むことが多いですが、重度の場合、骨に影響が及ぶこともあるため、痛みが引かない場合は医師の診察を受けましょう。
擦り傷
マットや道着による擦り傷も頻繁に発生します。
道着を掴んで相手をコントロールするブラジリアン柔術では、皮膚がこすれることが多く、傷ができやすいのです。
擦り傷は見た目には軽度でも、放置すると感染症のリスクがあるため、早めのケアが必要です。蜂窩織炎などの細菌感染を発祥すると5日〜2週間ほどの期間を治療に要します。
ブラジリアン柔術で怪我をしやすい部位
ブラジリアン柔術では、特定の部位に負担がかかりやすく、怪我が集中する傾向があります。
怪我をしやすい部位は下記の通りです。
- 膝:膝は捻挫や靭帯損傷のリスクが高い部位です。ガードポジションの攻防やガードパスの際、関節技をかけられた際などに、膝に過剰な力がかかることがあります。怪我のリスクが最も多い部位と言えるでしょう。
- 腰:腰も痛めやすい部位です。トップポジションで相手の引く力に対抗し姿勢を保とうとする際に強い負荷がかかります。また、ガードポジションでは腰を使って相手の体重を支えたり、動きを制御したりするため、腰に強い負担がかかります。特にマスター世代(30歳以上)の男性は気をつけたい部位です。
- 肩:関節技を防ごうとしたり、相手や自分の体重を支える際に、肩に過度な負荷がかかることがあります。
- 首:絞め技をかけられたときやガードポジションをとる際、首に負荷がかかることがあります。無理に耐えようとすると首の筋肉や頸椎を痛めることがあるため、適切なタイミングでタップをすることが重要です。
- 指:グリップが多用されるブラジリアン柔術では、指関節に負担がかかり、指の捻挫や脱臼、骨折のリスクがあります。
特に膝、腰を痛めている人が多く、私自身柔術を始めてから膝は4、5回ほど痛めています。痛めた理由として、相手による足関節技や、ガードリテンションの際に無理な角度になったことがあげられます。
完治するまで1〜3ヶ月ほどかかったので、膝や腰などは特に注意を払っておきたい部位です。
怪我をすることで発生すること
練習ができなくなる
怪我をすると、当然のことながら練習を中断せざるを得なくなります。軽度の捻挫や打撲であれば数日から数週間の休養で済むことが多いですが、重度の怪我になると、数ヶ月間のリハビリが必要になることもあります。
この間、技術の向上や体力維持が難しくなり、モチベーションの低下にもつながる可能性があります。
仕事や日常生活に支障が出る
ブラジリアン柔術での怪我は、練習だけでなく日常生活や仕事にも影響を及ぼすことがあります。
たとえば、手首や指を怪我するとパソコンの作業が、膝や足首を痛めると歩行や階段の昇降が困難になることがあります。これらの影響は、怪我の回復が遅れる原因にもなります。
治療のために余計な出費が出る
怪我をした際には、治療費やリハビリ費用がかかります。軽い怪我であっても、通院や薬代が積み重なると、予想外の出費が発生します。
スポーツ保険(後述)に加入していない場合は、自己負担額が増えるため、経済的な負担も考慮する必要があります。
ブラジリアン柔術で怪我が起こりやすい状況
慣れない無理な動きをしたとき
初心者がよく陥るのが、慣れない動きを無理にしようとして怪我をするケースです。
技術が未熟な段階で無理な技を試みると、関節や筋肉に過度な負荷がかかる、相手の体に強く接触してしまうなど、怪我につながることがあります。
技術を早く習得しようとあせる気持ちが怪我の原因になることが多いのです。無理な動きはひかえましょう。
スパーリングのみならず、技の反復練習でも起こり得ます。私が見てきた中では、膝が相手の顔に接触して相手の鼻や歯が折れるケース、タックルをしかけて頚椎を痛めたケースなどがありました。初心者のうちはマウスピースをつけるなど予防も検討してください。
タップをするのが遅かったとき
ブラジリアン柔術では、関節技や絞め技が決まりそうになったときに、タップをして相手に技を解除してもらうことができます。
しかし、タップが遅れると相手も極まっていると気づかず、可動域を超えた範囲まで手足をひねられてしまうことがあります。経験の浅い人、過度に負けん気が強い人はは我慢してしまいがちなので注意が必要です。
体格差のある相手と練習したとき
相手との体格差が大きいと、力や体重の差により体にかかる負荷が増えます。特に、相手の力が強い場合、無理な体勢に追い込まれたりして関節や筋肉に過度な負荷がかかり怪我のリスクが高まります。
そのため、体格差がある場合は無理をせず、早めのタップを意識する、相手に配慮してもらうよう事前に声かけをするなど配慮が必要です。軽量の相手に配慮できない人とはスパーリングをしないというのも効果的な予防の一つです。
ルール認識の薄い相手と練習したとき
ブラジリアン柔術のルールやマナーをよく理解していない相手と練習することも怪我の原因になります。
たとえば、相手がタップを見逃したり、力加減がわからずに過度に技をかけてしまうことがあります。このような状況を避けるためには、練習前にルールの認識を共有することが重要です。
特に白帯の人には指導者が声かけをするなどの工夫が必要です。
他のジムの人と練習するとき
他のジムの人とスパーリングをする際は、技術やスタイル、ルール認識の違いがあるため、怪我のリスクが高まることがあります。
相手の動きや技の癖を理解していないため、予期せぬ動きに対応できずに怪我をすることがあるからです。また、それぞれのジムによりスパーリング中のルールが異なるため、予期せぬ技をかけられて対応が遅れ、怪我をするケースもあります。
そのほか「他のジムの人に負けてなるものか」と外部の人間に対してきつく当たる人と出くわす可能性もあります。他ジムへの練習(出稽古)には最低限の実力を身につけてからいくことをおすすめします。
実際私も出稽古の際、膝の亀裂骨折や靭帯損傷などの怪我をした経験があります。出稽古や練習会では相手との認識のすり合わせや、出稽古先の先生、主催者との認識のすり合わせは必ず行いましょう。
他のジムの人と練習するときは、軽いスパーリングから始めることをおすすめします。
怪我予防とリスク回避方法
ストレッチをおこたらない
練習前後のストレッチは、怪我を予防するための基本です。
関節や筋肉をしっかりと伸ばすことで、柔軟性を高め、突然の動きにも対応できるようにできます。
また、練習後のクールダウンも重要で、筋肉の疲労を軽減し、怪我のリスクを下げる効果があります。
私自身、怪我をした経験から時間をとって手首や足首のストレッチをするようになった結果、怪我の頻度が下がったのでストレッチは欠かさないようにしましょう。
早めのタップを心がける
無理をせず早めにタップをすることも重要です。特に、関節技や絞め技では、一瞬の遅れが大きな怪我に繋がる可能性があります。
勇気を持ってタップすることが怪我を未然に防ぐポイントです。
危険を感じる相手と練習しない
スパーリングをする相手を選ぶことも、怪我予防の一環です。
特に、力任せに技をかける相手や、ルールに従わない相手との練習は怪我のリスクが高まります。
自分の体を守るためにも、信頼できる相手と練習することが大切です。
先にルールの認識に相違がないか確認する
練習前に相手とルールや使用する技について認識を共有することで、怪我や事故を防ぐことができます。
特に他のジムの人や初対面の相手とスパーリングを行う際は、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
マウスピースやサポーターを常用する
マウスピースやサポーターなどの保護具を使用することで、怪我のリスクを大幅に軽減することができます。
特に、膝や手首などの関節部位をサポートするサポーターは、捻挫や打撲を防ぐ効果があります。
また、スパーリング中は無意識に歯をくいしばっているため、歯にも強い負担がかかっています。
これにより歯の痛みが引き起こされたり、相手と接触した際に歯が欠けてしまうこともあるため、マウスピースの使用が推奨されます。
テーピングを常備する
テーピングを常備しておくことも、怪我予防に効果的です。練習前に不安を感じる部分をテーピングで固定することで、動きの制限をかけ、怪我を未然に防ぐことができます。
怪我をした時はまずは病院へ
もし怪我をした場合、軽度な場合でも病院にいきましょう。
大したことがなくても確認をするだけで気持ち的に安心を得られますし、反対に思ったより重症だった場合は早期の治療開始につながります。
また、病院に行くことを前提として、スポーツ保険への加入もしておくと良いでしょう。
「確認動作」はできる限り控える
怪我をした場合、痛みや違和感がある箇所を確認するために動かしたくなることがありますが、これは怪我を悪化させる原因となります。
関節や筋肉の怪我は、動かすことで更に損傷が広がる可能性があるため、まずは安静にし、速やかに医師の診察を受けることが重要です。
入って損なし!スポーツ保険の加入は必須
ブラジリアン柔術は怪我がともなうスポーツです。そのためスポーツ保険に加入することは、怪我による経済的な負担を軽減するために非常に重要です。
また、保険に加入していることで心理的にも安心して練習に集中することができるので、予期せぬ出費に備えて保険に加入しておくことをおすすめします。
補償内容によって料金は変わりますが、一般的なものであれば年間1,850円ほどで入れるため、加入しておいて損はないでしょう。
ブラジリアン柔術は怪我なく楽しくできるスポーツ
ブラジリアン柔術は、技を駆使して相手を制することができる魅力的な格闘技ですが、怪我のリスクは常に存在します。
しかし、この記事で紹介した怪我の種類や予防策を前もって理解し適切な対応を心がけることで、怪我を避け、安全に楽しむことができます。
怪我を恐れずに、しっかりと準備と対策を行い、ブラジリアン柔術を存分に楽しみましょう。